よみむめも

正しい瞬間に正しいことばを見つけるために

アントニオ・G・イトゥルベ(2016)、小原京子訳、「アウシュヴィッツの図書係」、集英社

Abridgment for Me

奇跡だけが希望だった時間の記録

My Favorite Expression

「再び本を手に取ると、人生がまた始まる気がする」
Underlined sentences
「真実は戦争の第一の犠牲者かもしれない」
「真実は運命の気まぐれで変わって来る.でも、嘘はもっと人間臭い.人間が自分の都合がいいように作り出すものだ」

 Intriguing References

「兵士シュヴェイクの冒険」ヤロスラフ・ハシェク
(どこかで見た名前だと思ったら、ル・グウィンの「所有せざる人々」のアナレスの人、シェベックだった.ちょっと違った)

My Impressions

武器.

人間が自分を守るために持つ道具.
絶望的な檻の中で、色々な武器を携えた人たちがいた.
「私たちが憎しみを抱けば彼らの思うつぼです」そんな信念を抱いていたモルゲンシュテルン先生は、恐怖に打ちひしがれた人々とは違うペースを持っていただけで、狂人を装うことが目的だった訳でもないのだろう.
ミリアム・エーデルシュタインは、友人への優しい眼差しを武器に、
ニルスのふしぎな旅」のリクエストに何度も応えたマグダ、「モンテ・クリスト伯」のマルケッタ、子どもたちに科学の心を補給し続け、共産主義が何たるかを熟知していたオータ・ケラー、
強靭な自分を作り、目標を作ったフレディ・ヒルシュは、自分の弱さと強さのジレンマに殺される方を選んだのか?ミリアムおばさんが言うように「いつでもすべてに答えがあるとは限らない」.
ヒルシュの強靭さは、最後の選択も含めたものだと考える方が救われる.ひとりのカリスマに期待したルディが絶望することで、彼は逃亡欲求を最大限にして武器にできたし、自身のデータを武器にして、そこから生まれる正義感がなによりも武器だったはずだし.
図書係のディタの武器は真実への欲求と想像力だった.
娘の目には非力に見えたディタの母リースルの武器は、非力を自覚して考え続けることだった.
著者があとがきで書いているように、実在の英雄なのだと思う.
英雄が生まれる社会は平和な世界ではないのだね.そうか、平和というのは平等に和やかということなんだ.