よみむめも

正しい瞬間に正しいことばを見つけるために

小野不由美(1998)、「屍鬼」、新潮社

Abridgment for Me

人の世の話.

信仰、孤独、理想、本能、欲求、摂理、秩序、執着、憎悪……ありとあらゆる面から、人の世を残酷な視点で切り刻んだ小説.

 

My Favorite Expression

「真に不思議なのは人という命の由来ではないんです.人という器の中に宿った人格の由来なんですよ.それはいつから芽生え、いつ終わるんでしょうね.」(静信に沙子を託す人狼、辰巳の言葉)

 

My Impressions

よりに寄って顔に大きな怪我をした息子が手術のための入院をする前日に、怪我人当人から教えてもらったアニメーションの原作を1年後に読んだ.想像していた通り、人が作りだす現実が酷くあぶり出されていたし、日常の、普通の人々の意識上、下に積もるものが何かの拍子に変容して非日常になる現象が非現実的と限らない、と小説内で何度も感じさせられた.読み終えて改めて、多様な「自分」である人々が、それぞれに人を愛することができるポジションを見つけ出して参加する人々が作る社会を希望するよ.