よみむめも

正しい瞬間に正しいことばを見つけるために

藤原辰史(2016)、「ナチスのキッチン」、共和国

Abridgment for Me
火の管理が課題だった時代は、食べることは調理場から始まっていた.そして日常は食べることを中心に回っていた.調理場の火の管理は、人びとの願望と燃料とともに形を変える.燃料の発明は都市労働者を生み、都市労働は家事も工場労働の横に席を作り、成績表に「効率」の項目が加わる.規格化された家事の非効率を主張した時代、人びともいた.それはセントラル・キッチンの試みだったが、戦争によって、この理想は頓挫したままだ.私たちがいるのは、非人間性ということを解決していない資本主義の歯車のシステムに内蔵された小さなキッチンだ.

Underlined sentences
◯(ナチの政策の中の)食の公共化
◯「人」が「空間」に組み込まれ、「空間」が「人」を超越し、「空間」に「人」が支配される.
◯(国家に与えられた「誇り」と)情熱も感傷もなくひたすら任務を遂行する「精神なき専門人」という像は、矛盾するようで実は一致する.主婦たちを考えさせず、感じさせず、考えを強要し、型にはめ、空間に埋め込む、その場と行動の型は、自動的に公共空間、そして戦争と結びつけられており、その空間に存在する人間は、ほぼ自動的に社会参加、もしくは戦争参加を果たさざるを得ない.ナチスの担い手というにはあまりにも政治には無関心で、犠牲者という以上にしっかりナチスを支持していた、という第三帝国を生きた主婦の奇妙な状況は、このような近代戦を台所に導入したからではないだろうか.

Intriguing References
「夜と霧」フランクル

My Impressions
基本的に家事仕事が好きなので、この本を手に取った.家事を楽しむことは、どんな贅沢でもそうであるように、色々な物事を前提としている.ナチスの歯車の中で嬉々として家事を行っていた主婦たちと、ささやかな工夫で家事を楽しんでいる私との間に、なんの違いも無いことに気づいた.