よみむめも

正しい瞬間に正しいことばを見つけるために

ピーター・ゴドフリー・スミス(2018)、夏目大訳、「タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源」、みすず書房

Abridgment for Me
「単なる物質からどのようにして知性や心が生まれたのか」がテーマ.
読みながら、私の関心は「単なる物質からどのようにして知性や心が生まれたのか、ということを知りたがる心と、まったく興味を持たない心の違いはどこから来るのか」という、もっと人間臭いことなのだと思った.つまり私の関心は教育に係る課題で、この著書は時間的にも生物分類の範囲においてもスケールがもっと大きかった.

Underlined sentences
◯オクトポリス一箇所だけの、数年という時間は進化的にはゼロに等しい.進化が生じるには、かなりの広い範囲で、少なくとも何千年という長い時間にわたって何かが持続しなくてはいけない.
◯頭足類の中でも知性が複数、平行して進化した証拠があるということだ.この事実は、頭足類が複雑な神経系を持つように進化したのは単なる「偶然」ではないことを示唆する.単なる偶然であれば、何度も起きる可能性は低いからだ.

Intriguing References
レフ・ヴィゴツキー(2001)、柴田義松訳、「思考と言語」新読書社

My Impressions
生物哲学という分野の著者の関心が広く深く、また海中の観察の様子が美しい.
ヒヒが社会生活で確立している3、4種のコールと解釈能力の関係と、頭足類の、色素胞の組み合わせで無限のコトバの「つぶやき」と存在しない受け手の関係は、ヒトが現在行っているコミュニケーションの技術自体も進化という実験なのではないかと思えて来る.