よみむめも

正しい瞬間に正しいことばを見つけるために

呉明益(2015)、天野健太郎訳、「歩道橋の魔術師」、白水社

Abridgment for Me

私が生まれた頃から1991年まであったという、台湾のショッピングモール「中華商場」の風景がオムニバス式に描かれている.お粥や焼き餃子を食べさせる食堂の子、釘を量り売りする金物屋の子、鍵職人の家の子、時計職人の子、眼鏡屋のマドンナに憧れる鞄屋の子、占い師の早熟な娘、静かで上品な紳士服店主が壊れて行く瞬間……ごちゃまぜな時間に起きた子どもの死、大人の死もひとつの過去という一括りの中では、ほかの出来事と同列になる.歩道橋で、物売りに混じってマジックを披露しながら道具を売る謎の魔術師の思い出で、短編が繋がっている.

 

My Favorite Expression

世界には、鍵で開けられないものがたくさんある(「石獅子は覚えている」)

 

Intriguing References

「複眼人」