よみむめも

正しい瞬間に正しいことばを見つけるために

菱木政晴(1993)、「浄土真宗の戦争責任」、岩波書店

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1990年4月の表白で「他力たのみたてまつる悪人、もっとも往生の成因な」る真宗の信仰に拠る自己批判がなされていないことに対する告発.


My Favorite Expression
「わが身のわろきをしることが仏法を聞いたことの利益だ」
「真俗二諦論自体が間違っていると告白するか、それを浄土真宗の中心としたことが間違っていると告白するかでなければどうにもならないのではないだろうか」
「宗教活動とは、宗教機能を用いて世俗的な目的を達せようとすること」

 

Intriguing References
歎異抄

 

My Impressions
薄い冊子に盛り込まれた過激な確信.ある種の被害者的表現の「加担」「協力」でなく、強気に媚び追従しない者たちを切捨てる教義を育てて来た歴史と、それに基づいて積極的に侵略戦争を進めた事実を反省すべきところが為されていない、と書いてあった.
靖国神社の教義、ここに手を合わせることの意味がわかりやすく解説されていた.この国家神道的価値観が、健在していることが色々な社会現象から思い浮かぶ.私の中にも知らずに浸透しているのはどの感覚だろうか?と振り返ってみる.
墓場に自分の嘘(歴史の欺瞞の一部)を持って行くことを止めないと、この先浸透し続けるのだろうな.

小野不由美(1998)、「屍鬼」、新潮社

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人の世の話.

信仰、孤独、理想、本能、欲求、摂理、秩序、執着、憎悪……ありとあらゆる面から、人の世を残酷な視点で切り刻んだ小説.

 

My Favorite Expression

「真に不思議なのは人という命の由来ではないんです.人という器の中に宿った人格の由来なんですよ.それはいつから芽生え、いつ終わるんでしょうね.」(静信に沙子を託す人狼、辰巳の言葉)

 

My Impressions

よりに寄って顔に大きな怪我をした息子が手術のための入院をする前日に、怪我人当人から教えてもらったアニメーションの原作を1年後に読んだ.想像していた通り、人が作りだす現実が酷くあぶり出されていたし、日常の、普通の人々の意識上、下に積もるものが何かの拍子に変容して非日常になる現象が非現実的と限らない、と小説内で何度も感じさせられた.読み終えて改めて、多様な「自分」である人々が、それぞれに人を愛することができるポジションを見つけ出して参加する人々が作る社会を希望するよ.

レン・フィッシャー(2006)、林一訳、「魂の重さの量り方」、新潮社

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16世紀末から17世紀という時代の教会またはジュリオ・リブリ(シンプリチオ)とガリレオ(サルヴィアティ)の間にあった「宇宙」、20世紀初めのダンカン・マクドゥーガル博士の瀕死の肉体の計量、1990年に入ってからのH・ラヴァーン・トワイニングのマウスの計量……見えないものの計測に注がれた情熱、その中から生まれた「物質とは何か」「魂とは物質か」「私が測定した質量は何か」という問い、18世紀のヘンリー・ヤングの実験とニュートン支持者(ヘンリー・ブルーム・ジュニア)の罪深い信心、17世紀の錬金術に没頭した人々と流行(常識)、ロバート・ボイルの心に秘められた錬金術信仰と「錬金術師ヘニング・ブラントの実験結果の無断流用」、18世紀後半のアレッサンドロ・ボルタボローニャ大学の解剖学者ルイジ・ガルヴァーニ、そして彼の甥のアルディーニの接触電位の実験……などなど、何せ感動的に有名無名(私が知らないだけの人も含めて)の登場人物が多くて目が回る.

My Favorite Expression, problem phrase

「これまで発見されたどのエネルギー変換も、どのエネルギー輸送過程も、浪費を含んでいる」

Intriguing References

『新科学対話』ガリレオ・ガリレイ

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戦い最中の実験者、研究者たち、それをとりまく支持者や流行から生まれる様々な価値観や人々の生活、感情とは関係なく、誰も彼も実験と試行錯誤が、時間を越えれば協力しあっているという事実を、ヒトというのは、なかなか受け入れようとしないものなのね.

アンドレア・ウルフ(2017)、鍛原多惠子訳、「フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明」、NHK出版

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自分の目で見たい、自分の感覚で確認したい、自分が見たこと、感じたことが独りよがりではないことを証明したい、伝えたい、という情熱を89歳で亡くなる瞬間まで絶やすことがなかったアレクサンダー・フォン・フンボルトと、彼の情熱に負けるはずがない人々(チャールズ・ダーウイン、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテシモン・ボリバルヘンリー・デイヴィッド・ソロージョージ・パーキンス・マーシュ、エルンスト・ヘッケル、ジョン・ミューア)の冒険物語

My Favorite Expression
自然にかんするそのような本は、自然そのものと同じような印象を与えるものでなければならない(「コスモス」執筆前の構想)

Intriguing References
フンボルト自然の諸相 ── 熱帯自然の絵画的記述』(2012)木村直司編訳、筑摩書房
Die Kosmos-Vorträge (1827/28)
『新大陸赤道地方紀行』(2001)大野英二郎、荒木善 訳、岩波書店
ダーウィンの『種の起源』』(2007)ジャネット・ブラウン、長谷川眞理子訳、ポプラ社
ファウスト』(1969)大山定一訳、筑摩書房
My Impressions
フンボルトの目になって今の環境を悲観することはお手軽なんだけど、フンボルトの楽観を真似して、残されている自然とヒトとの関わりを「見てやろうじゃないの」と鼓舞する方を選びたいね.フンボルト先生に敬意を表して.子どものころに「読まされた」教科書的なものとは違う、面白い伝記が発刊されるようになって嬉しい.

ところで、マーシュ(フンボルト心棒者のひとり)が「人間と自然」で書いたという「地球は急速に、そのもっとも気高い住人の住処に適さない場所になりつつある」という表現はいただけない.

そうではなくて、ヒトは地球に住むに適するような気高い住人ではなくなろうとしている、とか

もう、その気高さを望まなくなっている、とか、

気高さを志す社会をヒトが諦めようとしている、とか、そういうことだと思うからな.

ケン・キージー(1962)、岩本巌訳(2014)、「カッコーの巣の上で」、白水社

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自由と暴力または忖度とコンバイン

 

My Favorite Expression

「狂った、恐ろしいこと、あまりにも馬鹿げたことなので、悲鳴をあげることもできないし、また笑いとばすには真実味がありすぎることがーしかし、いまは霧が濃くなってきたので、その光景を見ないですむ」
「私は、彼が彼そのものであるから、ただ手を触れたいだけだ」


Intriguing References

船乗りの歌
時には偉大な観念を
最後のロデオ

 

My Impressions

「郭公の巣」というタイトルで見かけたら、この本を開かなかったかもしれない.つまり評判になったと聞いていたから読み始めたのは確かなのだけれど、特に訳者の解説まで読んだ後では映画を観ることはないと思う.人が、失った時間と封じてしまった物語を取り出すには勇気が要るということを語っているプロムデン酋長は、映画には描かれていない気がする.
赤毛のR.P.マックマーフィの誇りはシラノ(.ド.ベルジュラック)と並べて胸に留めておこう.


ヒト、本当に起こったことではない真実と真実ではない現象、見たいもの/ことを見ることができる生き物.

 

 

 

川崎修(2014)、「ハンナ・アレント」、講談社学術文庫

My Favorite Expression

歴史の自覚された始まりだけが

自覚的に工夫された新しい政治体だけが

人類から追放され人間の条件から分断され増々ふえ続けている人々を

いつの日にか再び統合することができるのである.

 

Intriguing References

カント政治哲学の講義(『完訳カント哲学講義録』、明月堂書店)

自由論、アイザイア・バーリンみすず書房

全体主義の時代経験、藤田正三、みすず書房

 

My Impressions

憧れの評議会制が成り立つためには、成熟した個人(常に、他者の意図と自己の意志を区別して思考する境界をもった人間、としておこうかな)、あるいはそれを育む社会が前提になってしまう.

時として「居心地が悪いな」と感じるグループに紛れ込むことがある.そこでは、オムレツを作るためにしか卵を割ることが許されない.卵を割れば卵は割れる、それだけのことなんだけど.

芥川龍之介(1927)、「河童」、ちくま文庫

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詩人のトック、トックの隣りの哲学者マッグ、学生のラップ、音楽家のクラバック、硝子会社のゲエル、医者のチャック、そして漁夫のバッグ.メスの河童には霊感が強いメディアムホップ夫人以外、名前がない.

 

My Favorite Expression

わたしは若いときは年よりだったし、年をとった時は若いものになっている.従って年よりのように欲にも渇かず、若いもののように色にも溺れない.とにかくわたしの生涯はたとい仕合せでないにもしろ、安らかだったのには違いあるまい.

Intriguing References

モンテーニュ、随想録

 

My Impressions

すでに河童連中が懐かしい.